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難聴の子どもの育て方

難聴の子どもの育て方

耳の不自由な赤ちゃんでも、早くから補聴器や人工内耳をつけて、
適切なサポートが得られる環境で育つことで、
健聴の赤ちゃんと同じ道筋で「ことば」を身につけることができます。

1.ことばの発達

ことばの育つ環境

 なぜ、赤ちゃんはおしゃべりができるようになるのでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんは、耳が聞こえていても、お母さんのことばが理解できるわけではありません。それでも、お母さんは赤ちゃんにどんどん話しかけます。赤ちゃんの泣き声に応じて「あっ、おっぱいね」とか「おむつが汚れたのね。さあ、きれいにしましょうね」「あら、ねむいのね。おねんねしましょうね」などと、あたりまえのように話しかけています。こうしたお母さんの語りかけは、まだことばを知らないはずの赤ちゃんにもちゃんと伝わります。なぜなら、赤ちゃんの願いや状況にぴったりだからです。ことばそのものはわからなくても、お母さんの優しさが込められた声音が赤ちゃんの耳に届き、オッパイやオムツ替えの時の「うれしい、楽しい、いい気持ち」の思いとともに赤ちゃんの脳に記憶されていきます。そういう心が通じあった数えきれない親子のやり取りを通して、やがて1歳を迎えるころまでにはだんだんとことばの意味をわかっていくのです。また、赤ちゃんはいろいろな声を出します。楽しく遊びながら声を出したり、何かに困り助けを求めて声を出したりと様々ですが、どれも赤ちゃんの感情や意志を表しています。それを聴いた周りの人たちは、ますますその場にふさわしいことばをかけるようになり、それがまた赤ちゃんを喜ばせ、元気づけて、赤ちゃんの声やおしゃべりを促していきます。そんなこころの通った楽しいやり取りの中で赤ちゃんはわかることばがどんどん増え、やがて片言が発せられるのです。

イメージ:ことばの発達

愛されることで 人間のことばは生まれる

 音というのは不思議なもので、聴こうとしなければ耳と心には届かず、聞き流してしまうものです。赤ちゃんは自分の想いをお母さんによく聴いてもらい、愛情をたくさん注いでもらうことで、お母さんを求めるようにして自ら聴くことを始めるのです。そして、自分にとって大切な声に対する集中力をどんどん増し、ついにある音が意味を持っていることに気づくのです。これがことばの誕生です。ですから、愛してくれる他者がいなければ、人間のことばは生まれないのです。

2.「聴覚障がい」ということ

まったく聴こえない人はほとんどいない

 耳の不自由な赤ちゃんはまったく聞こえないだろうと考えがちですが、決してそうではありません。聴覚障がいとは「いろいろな程度や状態で、聞くことに不自由のある人」であり、まったく聞こえないということではないのです。

イメージ:「聴覚障がい」ということ

人工内耳・補聴器を使って、耳を開く

 聴力が非常に厳しい場合でも、人工内耳(蝸牛埋込)という耳鼻科手術があります。世界各地で盛んに施され、日本でもさまざまな大学病院で行われていて、私たちの学校でも人工内耳をした子どもたちが良い成長を見せています。聴覚障がいの赤ちゃんも早くから補聴器をつけて、耳を十分に使っていけば、聞こえる赤ちゃんと同じようにことばを耳から覚えていくことができるのです。ですから、お子さんの耳が不自由だからといって、話をすることをあきらめる必要はありません。

3. 話せるようになるには?

できるだけ早く、最適な補聴器を両耳につける

 「赤ちゃんに補聴器なんて早すぎて無理ではないか?」と思われるかもしれませんが、無理でないばかりか、必要なのです。健聴の赤ちゃんが1年かけてことばを聴き貯めることからもわかる通り、その1年は言語習得にとってとても大切な時期といえます。まず補聴器をつけて、生活の中で赤ちゃんの反応を見ながら補聴器を調整していくことが望ましいのです。補聴器をいつもつけていると耳がもっと悪くなるのではと心配する方もいますが、十分に注意した上で適切に調整しさえすれば聴力を落とす心配はありません。

心を通わせた楽しい語り合いがことばを豊かにする

イメージ:話せるようになるには?

 赤ちゃんは良く声を出します。それは何でもないようでも、必ず心の動きを表しています。お母さんは赤ちゃんの声や動きに心を向け、耳を傾けることで、それが段々わかってくるのです。そして、心の通い合った中で話しかけるようになっていきます。「ことば」とは、このようなあたりまえの日常生活の中で、親子間での心を聴き合う楽しいやり取りや数えきれない語り合いを通して育つものです。何よりも心を通わせた楽しい語り合いがことばを豊かに育むのです。

母親が変わると、子どもも変わる

 個人差もありますが、実際に難聴の子どもがことばを獲得するためには、健聴児の何倍もの時間がかかります。しかし、母親が「大好きなこの子と一緒に楽しもう」と思えるようになると、子どもに変化が現れます。表情が変わり、声や笑いが発せられます。そしてやがて「意味のあることば」が出てくるのです。子どもの成長への希望は、「子どもの可能性を信じて待つ」という親や教師の子どもへ向けるまなざしの中で見えてきます。

4.学校の役割

何でも相談できるよきパートナーに

 聴覚障がい児の可能性を理解できても、病院で耳のことを言われた時のショックから立ち直ることは容易ではありません。それを乗り越えるためには、誰かの助けが必要です。それが学校なのです。本校では、ご両親が希望を持ってお子さんを育てることができる環境づくりをするなど、先生方がよき相談相手となり、大きな力となります。

プラスの部分を見出す

 この教育は、外からは隠れて見えないプラスの部分を見抜く感性や温かなまなざしを持つことが重要です。本校ではこのことが教師に求められる専門性だと考えています。こうした教師との関わりにより、お母さん自身が安定し、自信を持って子どもと家庭生活をしていくようになります。

人格の土台となる安定した「情緒」を育む

 発達心理学では、人格の土台となるのは「情緒」と考えます。ですから、人格の土台となる情緒が安定するためには、ことばばかりを考えるのではなく、まず何よりも、喜びや悲しみ、苦しみや楽しみなどの感情を、他者との関係の中で十分に経験する必要があります。それが思春期以降の自立を促し、やがては社会性を育みます。

イメージ:学校の役割

親のこころえ

聴覚障がいのお子さんを育てていく上でとても大切な「親のこころえ」をご紹介しましょう。

  • あるがままを受け入れる

    誰もがかけがえのない存在であること、そのままのあなたでいい、という愛情が心の土台になり、信頼関係が形成されます。
  • ことばのことだけを考えない

    言語習得にばかり執着しても豊かなコミュニケーションは生まれません。
    焦らず、のびのびと、成長を見守りましょう。
  • ほめること

    小さなことでもほめてあげることが、お子さんの自信につながり、張り合いもでて、やる気が湧いてきます。
  • 励ますこと

    励ましながら、少しずつ困難なことへとお子さんを導く。 自分ができる範囲を拡げることに興味をもつことが、可能性を開く第一歩です。
  • 一緒に喜ぶ

    どんな小さなことでもお子さんと一緒に心から喜びましょう。お子さんも必ず応えてきます。そこから本当のことばが生まれます。
  • 呼びかけに応える

    お子さんの呼びかけに必ず応じることで基本的信頼をもつようになり、心もことばもよい成長をします。
  • 過保護にならない

    不憫だからと親がみなやってしまうと、発達が遅れたり、依頼心が強く自信のない子どもになってしまいます。
  • 怒らずに育てる

    してよい事といけない事の区別を明確にし、「怒らず、ゆずらず、かしずかず」に、のびのびと育てていきましょう。
  • 生活のリズム

    寝る、起きる、食事をするなどの生活リズムをつくると、子ども自身も予測ができ、ゆとりをもって行動できるようになります。
  • 親は子どものモデル

    親の良い所も悪い所もすぐに真似るのが子どもです。
    笑顔のある家族関係の日常が子どもの判断力や価値観を形成します。
イメージ:親のこころえ
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